記事一覧

【書評】ハインリヒ・プレティヒャ著、平尾浩三訳、『中世への旅 騎士と城』、白水社

ハインリヒ・プレティヒャ著、平尾浩三訳、『中世への旅 騎士と城』、白水社


大学2年生の時、ドイツのお城について何か参考書がないかと図書館を調べると、1982年に刊行された古い本が見つかりました。
それがこの『中世への旅 騎士と城』でした。当時はお堅い専門書を読んでもすぐにちんぷんかんぷんになっていたのですが、それにひきかえこの本はとても読みやすく、中世世界に対するイメージも膨らんでいきました。
最近になって白水uブックスという文庫版で復刻されたようで、うれしくなり紹介しようと思いました。

本書の全体を通じて語られるメッセージは、「歴史を恐れるな」ということです。
高校で歴史を教えるプレティヒャは、歴史が無味乾燥な用語をひたすら暗記する科目となっていることを危惧しています(日本でもそうですね)。
ですが、歴史に登場する出来事ひとつひとつの背景には、とてつもなく多くの人々の活動や、感情が渦巻いていたのです。
こうした名もなき人々の日常生活は、現代の私たちの暮らしにも通ずるものがあるわけです。例えば、歴史の痕跡は文書史料だけでなく廃墟となったお城からもみることができます。
プレティヒャは、中世に存在した騎士たちの生きざまを描くうえで、極力現代の私たちにも実感をもてるよう工夫しています

「・・・つまり、われらが城はふつうあらゆる連中に対して開かれており、われわれは連中のひとりひとりをよく知っているわけでもないし、またわれわれは連中ひとりひとりに心を配るわけでもない。そして、なんというやかましさであろう!羊はメーメー、牛はモーモー鳴いているかと思えば、犬がワンワン吠えている。野良では百姓たちがわめき、車や手押車がギーギーときしんでいる。そしてわれらが城内では狼たちのうなり声も聞こえるのである。」―本書64頁。


このように、あたかも私たちの眼前に中世の世界が存在するかのように、プレティヒャは語りかけるのです。

本書にはフリードリヒ・バルバロッサやアーサー王などの著名な人物も登場しますが、基本的に主人公はいません。本書の主人公は、中世を生きた名もなき人々なのです。そして、歴史は名もなき彼らが作り上げたのだということを、本書は教えてくれます。

本書はあくまで「歴史読み物」です。決して実証的な研究書とはいえません。ですが、中世の抒情詩や写本から推測できる騎士の世界観を、生き生きと伝えてくれます。ドイツのお城に関する基本的な知識も得ることができます。

そしてなんといっても平尾浩三先生の訳が秀逸。全く違和感なく、スラスラと読めてしまいます。昭和に活躍したドイツ関係の研究者は偉大だなあ。

ちなみに本書の姉妹編もあります↓
ハインリヒ・プレティヒャ著、 関 楠生訳、『中世への旅 都市と庶民』、白水社
ハインリヒ・プレティヒャ著、 関 楠生訳、『中世への旅 農民戦争と傭兵』、白水社
にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ
にほんブログ村
にほんブログ村 歴史ブログへ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーサイト

【書評】アフロ(写真)、水野久美(文)、『世界の天空の城 歴史ロマンあふれる夢想風景』、青幻舎


アフロ(写真)、水野久美(文)、『世界の天空の城 歴史ロマンあふれる夢想風景』、青幻舎

お城仲間である水野久美さんが新しいお城本を出版されることになったので、ご紹介します。2016年11月25日新刊です。

コンセプトは天空の城!空中に浮かび上がる壮大な建造物と、それを取り巻く大自然。迫力があって幻想的な写真が盛りだくさんです。
解説文が短いですが、歴史背景に加え、映画のロケ地やモデルとして利用された経歴を多数紹介しています。映画・ファンタジー好きで、舞台となったお城が気になる方におすすめできます。また、簡潔な旅行ガイド付きです。

対象は世界中のお城で、ヨーロッパのお城から日本のお城まで紹介してあります。ドイツからはマルクスブルク城、ノイシュヴァンシュタイン城、ホーエンツォレルン城がノミネートされています。

定価は1600円とリーズナブルながら、とにかく写真がきれいです。自分もこんな写真撮れたらいいのにと思います。一方で文章の量は非常に少ないので、お城に詳しくなりたい方には物足りないかも。写真集として楽しむタイプの本です。

※書評リクエストも受け付けております!気軽にご相談ください
アフロ(写真)、水野久美(文)、『世界の天空の城 歴史ロマンあふれる夢想風景』、青幻舎
にほんブログ村 歴史ブログ 城・宮殿へ
にほんブログ村
follow us in feedlyこのエントリーをはてなブックマークに追加

【書評】水野久美、『いつかは行きたいヨーロッパの世界でいちばん美しいお城』、ビジュアルだいわ文庫

いつかは行きたいヨーロッパの 世界でいちばん美しいお城 (ビジュアルだいわ文庫)

こちらはお城関係の本を紹介&評論してみるコーナーです。
記念すべき初回は水野久美著、『いつかは行きたいヨーロッパの世界でいちばん美しいお城』、ビジュアルだいわ文庫、2014年

フリーライターである水野さんは、実は私と同様にヨーロッパのお城に関する講座を開講している珍しい方。
そんな不思議な縁もあって、最初にこの本を取り上げることにしました。(水野さんに関する詳細は公式HPよりどうぞ)。

本の概要
本書は、ヨーロッパ全域の名だたるお城を広く取り扱っています。
お城の種類も中世の古城から壮麗な宮殿まで様々。
ノイシュヴァンシュタイン城、ヴェルサイユ宮殿、ピッティ宮、プラハ城、シェーンブルン宮殿等々・・・。
とにかくヨーロッパに行ったらこれだけは見ておけ!というレベルの重要なお城ばかりです。

美しい写真とともに、それぞれのお城に関するエピソードが簡潔に述べられています。
そこでは、特にお城に関わった人物の歴史にスポットが当てられています。
例えばイタリア・フェラーラのエステンセ城について。

15世紀前半、城主ニッコロ3世は、愛妾との間に生まれた息子ウーゴを後継者にしようと決めていた。やがて、ニッコロ3世は20歳年下で、当時15歳のパリシーナと再婚。パリシーナとウーゴは義理の母子関係にあたるが、年齢は1歳のみの差だ。間もなく2人は激しい恋に落ち、2年間も秘密の関係を続けていた。しかし、夫ニッコロ3世に知られ、2人は塔の地下牢で惨殺されてしまう。
―本書47頁。


城に生きた王侯貴族たちの、愛と憎しみの人間模様。美しい建築のなかでは、かつてそのようなドロドロとした愛憎劇が繰り広げられていたのです。そして、今の人も昔の人も、日本人もヨーロッパ人も、同じ人としての心を持っているのだと気づかされます。

個人的見解
本書は、ヨーロッパの有名なお城にまつわる伝説や人物エピソードをダイジェストで把握するにはうってつけだといえます。
まったく知識がなくても読めますし、世界史や建築の知識があればより面白く読めます。
写真がきれいなので、夜寝る前に眺めれば良い気持ちで寝ることができます。また、文庫サイズで持ち運びやすいので、旅のお供として、簡単に予習するためのガイド本としても使えます。
長所と同時に短所といえる点は、やはり取り扱い範囲が広大なことでしょう。世界全体のお城をまとめたものよりは絞られていますが、やはりヨーロッパだけでもとても広い。広く浅く知りたい人向けです。

お城に関して狭く深い系の本はとても少ないです。マニアックになりすぎてしまう、または専門知識を持った書き手が少ない、という難点があるのは明らか・・・。ですが、お城は建築・歴史・文化・芸術等々、様々な人間の活動の結晶体(しかも影響力が大きい)であるといえます。お城について深く追求していけば非常に充実した知識が得られるのは確かです。だから、お城を知ることは人間を知ること、社会や文化を知ることにつながる・・・そんな話を、水野さんと語り合いました。

*書評リクエストも受け付けております。気軽にご連絡ください!

いつかは行きたいヨーロッパの 世界でいちばん美しいお城 (ビジュアルだいわ文庫)
follow us in feedlyこのエントリーをはてなブックマークに追加
にほんブログ村 歴史ブログ 城・宮殿へ
にほんブログ村
にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村

プロフィール

Ume

Author:Ume
ドイツのお城を専門に研究している珍しい人。著者についてはこちらもご覧ください。Facebookページはこちら(ブログ更新情報をお届け)。講演・執筆依頼など、メールフォームやコメント欄から気軽にご相談ください。
ブログのロゴが付いた写真は筆者自らが撮影したものです。無断転載・加工はご遠慮ください。

更新情報・リンク

follow us in feedly

Amazon.co.jp(アマゾン)
格安!!ヨーロッパのホテル予約
ドイツのお土産
★ぶっちぎり宅建ライブ開講★ 名物講師の白熱講義を!
国内&海外の格安ホテル検索『トリバゴ』

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

このページのトップへ